製造物とは、製造または加工された動産をいいます(製造物責任法2条1項)。製造とは、原材料に人の手を加えることによって、新たな物品を作り出すことをいいます。また、加工とは、原材料に人の手を加えることによって、その本質は保持させつつ新しい属性ないし価値を付加することをいうため、単に切断、冷凍、冷蔵、乾燥されただけの肉、魚、卵などは製造物に当たりませんが、生乳を加熱した牛乳、小麦を挽いた小麦粉、果物を搾ったジュース、野菜を塩水に漬けて味付けした浅漬けなどは製造物に当たります。
製造業者とは、製造物を業として製造または加工した者だけでなく、輸入業者のこともいいます(製造物責任法2条3項1号)。単なる販売業者は製造業者に当たりませんが、「製造元」や「輸入元」のような肩書を表示した者(製造物責任法2条3項2号前段)、肩書を付することなく商号や商標を表示した者(製造物責任法2条3項2号後段)、プライベートブランドのように肩書は「販売元」でも商品開発の過程に深く関与し実質的な製造業者と認められる者には製造物責任が認められます(製造物責任法2条3項3号)。
欠陥とは、製造物が通常有するべき安全性を欠いていることをいい(製造物責任法2条2項)、製造上の欠陥、設計上の欠陥、指示・警告上の欠陥に大別されます。判例では、製造物を通常の用法に従って使用していたにもかかわらず、その製造物によって損害が発生したことを証明すれば足り、欠陥を具体的に特定し、その原因や科学的機序まで証明する必要はないとされています。
欠陥による損害が製造物のみにとどまる場合、製造物責任を追及することはできません(製造物責任法3条但書)。しかし、製造物以外の拡大損害が生じていれば、製造物自体の損害も請求することができます。また、慰謝料や調査費用が損害として認められることもあり、拡大損害の有無が問題となる事案は限られています。
事故の原因となった製品は最も重要な証拠となるため、製造業者に引き渡すことはおすすめしません。消防や警察に提出する場合でも、所有権は放棄せず、返還を申し入れておく必要があります。また、事故を受けて販売中止や設計変更の措置が取られることもあるため、実験用の予備として同型品を入手する場合はご注意ください。
火災が発生した場合、消防による調査や警察による捜査が行われます。このような公的機関によって作成される火災原因判定書や実況見分調書などは、事故状況に関する数少ない客観的証拠となります。消防による調査や警察による捜査が終了すれば、現場への立入制限が解除されるため、写真や動画に記録しておいてください。また、焼失した物品がある場合は目録を作成する必要があります。