事故に遭った場合、直ちに負傷者を救護し、車を安全な場所に移動させたうえ、警察に通報する必要があります(道交法72条)。相手方の氏名、住所、連絡先、勤務先などを控えたら、お互いが加入している保険会社に連絡してください。万全の態勢で治療に専念するためにも、なるべく早い段階で弁護士に相談されることをおすすめします。
たとえ軽傷であっても、速やかに病院を受診してください。接骨院や整骨院を併用することもできますが、あらかじめ医師の指示を得ておく必要があります。
保険会社が治療費を医療機関に直接支払うことを一括対応といいます。一括対応を受けるには、保険会社に医療機関を申告し、同意書を提出する必要があります。ただし、一括対応はあくまで保険会社のサービスにすぎないため、これを強制することはできません。また、治療経過を確認するため、保険会社から医療照会がかけられることもあります。
誤解されている方もおられますが、労災が適用される場合を除き、事故の治療にも健康保険を使用することができます(昭和43年10月12日保険発第106号)。自由診療と比べて治療費を抑えることができるため、一括対応が打ち切られた場合だけでなく、一括対応を受けている場合でも、お互いに過失がある事故などでは、健康保険を併用することがあります。
症状固定とは、医学上一般に認められた医療を行っても、その医療効果が期待できなくなった状態をいいます。骨折を伴わないむち打ちなどでは、事故から半年ほどで症状固定と診断されるのが一般的です。症状固定後の治療費は自己負担となり、一括対応や休業補償も打ち切られるため、症状が残っている場合は後遺障害の申請を検討することになります。
後遺障害を申請する場合、医師に後遺障害診断書を作成してもらいます。誤解されている方もおられますが、重要なのはどのような資料を提出するかであって、事前認定か被害者請求かといった形式論ではありません。当事務所では、後遺障害診断書の内容を確認するだけでなく、必要に応じて弁護士の意見書を作成することによって、適正な等級が認定されるよう努めています。
診断書、診療報酬明細書、通院交通費明細書、休業損害証明書など、全ての資料がそろったら、損害額を算定して交渉を開始します。立て替えている費用がある場合、領収書の原本をご用意ください。最終的に金額の折り合いが付けば、免責証書を取り交わして示談します。
事故による損害のうち、治療費、交通費、休業損害などは実費での認定となります。ただし、自家用車で通院していた場合、交通費は1km15円で算定します。また、家事従事者の休業損害も、事故前年の女性平均賃金を基礎に算定します。
これに対し、慰謝料には、弁護士基準、任意保険基準、自賠責基準という三つの算定基準があります。弁護士の使用する弁護士基準は、保険会社の使用する任意保険基準や自賠責基準と比べて高額となることが多いため、弁護士が交渉することによって慰謝料を増額できる可能性があります。
保険会社との交渉が決裂したら、相手方に対して訴訟を提起します。提訴から1ヶ月ほどで初回期日が指定され、その後も月に1回ほどのペースで進行していきます。また、人損に争いがある場合、相手方から診療記録の文書送付嘱託が申し立てられることもあります。
裁判所に提出する書面のうち、当事者の主張を記載したものを準備書面といいます。2回目以降の期日では、交互に準備書面を提出し、争点を整理していきます。訴訟が終盤に差し掛かると、陳述書を提出し、必要に応じて証人尋問や本人尋問を行います。訴訟の多くは和解で終結しますが、判決まで1年以上かかることもあります。
Q1.修理費はどのように決まりますか?
A1.修理工場が見積りを出し、保険会社のアジャスターと協定を結ぶという流れが一般的です。アジャスターとは、損保協会に登録された自動車工学の専門家で、事故との整合性や損害額の調査を行います。
Q2.経済的全損とは何ですか?
A2.経済的全損とは、修理費が時価額と買替諸費用の合計額を上回ることです。経済的全損の場合、修理費ではなく、時価額と買替諸費用の合計額しか請求することができません。
Q3.時価額はどのように決まりますか?
A3.判例では、事故に遭った車と同一の車種・年式・グレード、走行距離なども同程度の中古車市場価格とされています。ただし、中古車が流通していない古い車などでは、新車価格の10%とすることもあります。
Q4.買替諸費用とは何ですか?
A4.買替諸費用とは、事故に遭った車と同種同等の車を購入するために通常必要とされる費用のことです。判例では、自動車取得税(環境性能割)、車検登録費用、車庫証明費用、納車費用、各種代行費用、リサイクル預託金などを請求することができるとされています。
Q5.評価損とは何ですか?
A5.評価損とは、修理によっては回復できない損害のことです。サイドメンバー、クロスメンバー、インサイドパネル、ピラー、ダッシュパネル、ルーフパネル、フロアパネル、トランクフロアなどの骨格部位に修復歴があると、事故車として査定が下げられます。
Q6.新車でなければ評価損は認められませんか?
A6.判例では、国産大衆車であれば初度登録から3年(走行距離4万km)、外車や国産高級車であれば初度登録から5年(走行距離6万km)以内が目安とされています。
Q7.評価損の相場はどれくらいですか?
A7.判例では、国産大衆車であれば修理費の20%、外車や国産高級車であれば修理費の30%が目安とされています。
Q8.無過失でなければ代車は認められませんか?
A8.お互いに過失がある場合でも、過失割合に応じて代車費用を請求することができます。
Q9.いつまで代車を使用できますか?
A9.判例では、修理であれば2週間、買替えであれば1ヶ月ほどが目安とされています。
Q10.服や荷物の代金を請求することはできますか?
A10.領収書などがない場合でも、購入した時期や金額を申告すれば、減価償却した時価額の認定を受けることができます。これに対し、眼鏡は人損扱いとなるため、新しく購入した金額を請求することができます。
Q11.保険料の増額分を請求することはできますか?
A11.車両保険などを使用した場合でも、保険料の増額分を請求することはできません。
Q12.慰謝料を請求することはできますか?
A12.ペットや家屋が被害に遭った場合を除き、物損に関する慰謝料を請求することはできません。